棚卸資産は、「保管している在庫は正しい量なのか?」「今月はどのくらいの利益があるのか?」など、美容室を経営していく上で気にしておかなければいけない項目の一つです。
さらに個人事業主の場合は、決算末に残った貯蔵品を確定申告で計上しなければならないので在庫資産の把握は必須ですよね。
そこでこのページでは、棚卸資産と利益の関係や当店『髪質改善美容室リッパーピッピ』で行っている棚卸資産の算出方法について説明します。
棚卸資産を把握する必要性
棚卸資産とは、簡単に言うと店舗で保管している「在庫」のことです。もう少し細かく言うと、業務のために購入した物だけど、実際にはまだ使用されずに残っている未使用品のことです。
カラー剤やシャンプーなどの材料は、仕入れるときに材料費や消耗品費として計上しますが、期末に残っている材料は貯蔵品として勘定され、次期へ繰り越します。
貯蔵品は資産なので、入庫や出庫をきちんと管理することが大切です。
美容室の在庫には、カラー剤やパーマ液、店舗販売用のシャンプーやトリートメント、包装用紙や切手などの商品が該当します。
これらがないと商売はできませんが、棚卸資産を多く持ちすぎていると、他の用途に使えたはずの資金を寝かすことになるので効率的ではありませんよね。
例えば、30万円分の在庫で済むところを毎月50万円分を保管している状態だとすると、毎月20万円のお金を無駄に放置していることになります。適正な在庫で回転率の良い状況にすることが重要です。
棚卸資産と売上の関係
棚卸資産を把握しないで毎月の売上を計算した場合、粗利益が大きく変わってくることがあります。
例えば、6月と7月に同じ100万円を売り上げたとしても、在庫によって売上総利益に違いが出ます。
売上総利益は、次の2つの計算式から算出することができます。
- 売上原価=期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高
- 売上総利益(粗利益)=売上高-売上原価
期首棚卸高とは、カウントを開始する月の最初にあった商品の在庫金額のことで、期末棚卸高とは、次回カウント開始する月の前の日にあった商品の在庫金額のことです。
下記のような6月と7月の場合、それぞれの粗利益を見てみましょう。売上高は、先述した100万円とします。
月 | 仕入高 | 月末の棚卸高 |
---|---|---|
5月 | 10万円 | 38万円 |
6月 | 12万円 | 42万円 |
7月 | 25万円 | 40万円 |
6月の売上原価から売上総利益を求めるには、先程の計算式に当てはめます。
- 38万円(6月初棚卸)+12万円(6月仕入高)-42万円(6月末棚卸)=8万円(売上原価)
- 100万円(売上高)-8万円(売上原価)=92万円
次に同じように7月の売上原価から売上総利益を求めてみます。
- 45万円(7月初棚卸)+25万円(7月仕入高)-40万円(7月末棚卸)=30万円(売上原価)
- 100万円(売上高)-30万円(売上原価)=70万円
このように月の売上が100万円のときでも、粗利益は6月が92万円で7月が70万円となります。
売上総利益(粗利益)を多く得るためには、売上を上げるか、仕入材料費を減らすことで上げることができます。
ただし美容室の経営は、粗利益の他に家賃や人件費、広告宣伝費など、様々なものをトータルして利益が出るので、売上総利益を上げることだけに固執する必要はありませんが、意識しておくことをおすすめします。
棚卸資産を確定する方法
棚卸資産を確定するには、数と価値の2つを把握する必要があります。
自分にあった管理方法を探して頂けるように、ひとつの例として、当店「リッパーピッピ」で行っている棚卸資産の算出方法について説明します。
当店の在庫管理の方法
棚卸資産を算出するためには、毎月の在庫管理を把握する必要があります。
当店では、在庫管理担当者をスタッフが交代制で行っています。担当者スタッフは、「入庫→保管(在庫)→出庫」の3つの状態の数量をカウントし、月末に集計した数を経理に報告します。
スタッフの在庫管理の方法について詳しく知りたい人は、こちらの「美容室の在庫管理で経営状態が見えてくる」を参考にしましょう。
当店の棚卸資産の算出方法
経理担当者は、在庫管理表を元に毎月の棚卸資産を算出します。
リッパーピッピでは、無料で使えるビズオーシャンの棚卸表のテンプレートをダウンロードして使用しています。
画像引用:bizocean(ビズオーシャン)
まず最初に、ダウンロードした棚卸表へ、「商品名」と「単価」を入力します。
棚卸資産表では単価が同じ商品は同一商品としてカウントするので、商品ごとに細々と分類する必要はありません。
例えばカラー剤の場合、在庫管理表にはナチュラルやブラウン、ベージュ・・・など色別さらにはレベル別に分類してカウントしているかもしれませんが、棚卸資産表には単価が同じ商品を合計して合算した数を記入します。
あとは、毎月同じ時期に在庫の数を「数量」欄へ入力するだけです。
数を簡単に合計する方法
項目が大量にあって一つ一つを電卓で合算するのが大変なときには、私はExcelのオートSUM機能を使って合計を出しています。
棚卸資産表というよりは、エクセルの使い方になってしまいますが、オートSUM機能について説明します。在庫管理表から同じ単価の商品の合計値を簡単に出すやり方です。
在庫管理表の在庫数の欄を、マウスの左ボタンをクリックしながら下へスクロールして、同一商品を緑色の枠で囲って範囲選択します。
範囲選択した部分を右クリックして「コピー(C)」を選択します。または下図のキーボードのように、黄枠「Ctrl」+「C」を同時に押してコピーすることもできます。
コピーしたら上図のオレンジ枠「Alt」+「V」をキー操作して、貼り付けたい場所にペーストします。貼り付ける場所は、適当なエクセルのページで構いません。
緑枠で範囲選択されていることを確認したら「オートSUM」をクリックします。すると自動的に足し算して下端に合計数が表示されます。
オートSUM機能を使うと、どんなに多くの商品があったとしても簡単に集計することができます。
月毎に記録を残す方法
またまたエクセルの使い方になってしまいますが、商品名と単価を入力したら来月用のためにページを増やしておくことをおすすめします。
商品や単価は基本的にあまり変動しないので、私は数量を入れる前に次回用にシートコピーしておきます。
「棚卸表」と書いてあるシートにマウスを合わせて右クリックすると「※1」の項目が表示されます。
ここから「移動またはコピー」を選択すると、「※2」が表示されるので下部の「コピーを作成する」に☑を入れて「OK」をクリックします。
これで簡単に棚卸表に商品名と単価が入力されたシートがコピーできます。
期末の在庫数と入庫数の資産表を作成する
在庫数を入力すると、自動的に棚卸資産額を算出してくれます。毎月、月始か月末など集計する日を決めて棚卸資産を集計しましょう。
さらに入庫した資産を算出すると、売上総利益(粗利益)が出るので「在庫の資産」と「入庫の資産」の2パータンを集計することをおすすめします。
美容室の経営についてお困りの経営者様や当店の経営方針に興味がある方は、私の得意な分野でサポートやアドバイスを提供いたします。詳しく知りたい方はこちらの「美容室経営にお困りのオーナー様!」をご覧ください。
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