美容室経営では、在庫管理は重要な業務の一つになっています。
なぜなら在庫管理ができていないと、経営状態を正確に把握できませんし、無駄なコストをかけていることに気付かない可能性があるからです。
さらに、確定申告で節税効果が高い特別控除を受けるには、在庫の棚卸資産を把握することは必須項目です。
そこで今回は、疎かにしがちな在庫管理や棚卸資産についてまとめてみました。
在庫管理の必要性
在庫管理の必要性について、わかりやすいようにお花屋さんを例に見てみましょう。
お花屋店主のAさんは、週に2回お花を仕入れに市場へ行きますが、足りないことのないように3日分を多めに仕入れます。
このお店では、カーネーションが毎日15本前後は売れているので、1日あたり20本弱は必要になるといったところでしょうか。
カーネーションが毎日18本ずつ売れると3日間で54本は必要なので、最低でも58本は仕入れています。しかし、毎日10本しか売れなかったときには、28本が残ってしまいます。
売れ残ってしまうと、見切り品として値下げするか廃棄処分しなければなりません。
このように多くの店主は、商売のために一定のロスが出てしまうことを受け入れながら、多すぎず少なすぎずを考察しながら仕入れています。
しかし、美容室の仕入材料は鮮度や品質管理が求められる商品ではないせいか、在庫に関して敏感に捉えていないオーナさんもいるようです。
在庫管理から見えるキャッシュフロー
美容室の材料は使用期限が長いものも多く、欠品を避けなければならないことから、在庫を多く抱えている店舗も見られます。しかし、過剰資産はサロン経営のリスクとなることがあるので注意が必要です。
その材料を長期間寝かしてるということは、その材料を購入したお金を放置していることと同じ状態です。
何十万円も放置しているのであれば、その分を借入返済にあてた方がよっぽど有意義ですし、新サービスの開発や投資に使うこともできます。
在庫管理がきちんと行われると、適正在庫数を把握でき、資金を無駄に眠らせることはなくなるでしょう。
在庫管理から正しい収益を把握できる
もしも在庫管理をしていない状態だとすると、毎月の損益がわからない状況になっているのではないでしょうか。
棚卸資産が把握できると、正確な売上原価が判明します。
売上原価=期首棚卸高+仕入高-末期棚卸高
- 期首棚卸高とは・・・カウントを開始するときに最初にあった商品や材料の在庫金額
例えば、毎月月末に締める場合は、その月の1日時点にある在庫金額のこと。 - 末期棚卸高とは・・・次回カウント開始する前の日にあった商品や材料の在庫金額
例えば、毎月月末に締める場合は、30日や31日の月末にある在庫金額のこと。
この期首棚卸高と末期棚卸高を把握していないと、毎月の正確な利益がわかなくなってしまいます。売上高から売上原価を引くことで、その月の売上総利益がわかります。
売上総利益=売上高-売上原価
「売上高が上がっているのに手元にお金が残らない」と悩んでいる人は、利益の基本となる売上総利益を調べてみることをおすすめします。
損益を判断するには、棚卸資産の他にも家賃や人件費など多くのことが関係してきます。総合的に判断するためにも、個々に目を向けることをおすすめします。
在庫管理から見えてくる生産性の向上
なかなか使用されない多くの在庫を抱えているとすると、保管場所としてそれなりの範囲を占拠されているのではないでしょうか。
多くの商品が溢れていると、埋もれてしまって見落としてしまう可能性も出てきます。
当然、その物を保管するための管理コスト(人件費)もかかってくるので、良い経営状況とは言えません。
安全性に問題がないとしても、長期間放置され劣化した材料を使用するより、少しでも鮮度のいい安定した製品を使い続けた方がいいですよね。
在庫の回転率を知ることで常に品質の良い製品を使用できますし、余剰在庫が減ることで無駄な人件費がカットされるので、自然と生産性も上がってきます。
市場の変化に対応できる
さらに細分化して繰り返し集計すると、「○月は通常よりも多くの✕✕が減る」や「先月は✕✕をこんなに多くストックしておかなくても平気だった」など様々な変化に気付くことができます。
【在庫管理を行うメリット】
正しく在庫管理することで→適切な保有量がわかり→過剰発注や在庫不足を防げるようになる・・・このサイクルによって、次のような多くのメリットが得られます。
- キャッシュフローが改善される
- 安定した製品を提供(使用)できる
- 無駄な作業が減るので生産性が向上する
- 変化に気付きやすくなり需要に見合ったサービスを提供できる
在庫管理の重要性を理解して、製品やそこに関わる人材を資産として意識しましょう。
在庫管理の方法
在庫管理はスタッフ全員が共有していることが必須条件です。
Aさんは保管場所を守らないし、Bさんは使い切ったことを報告しないし・・・などと、個人個人がルールを守らないと正確な情報を把握できなくなってしまいます。
棚卸資産を把握するには、誰もが管理できる統一したルールを決めることが大切です。
当店の在庫管理
当店「リッパーピッピ」が行っている在庫管理のやり方を一つの例としてここに紹介します。
在庫管理は、大きく次の3つに分類して管理します。
- 材料:カラー剤やパーマ液、業務で使用するシャンプー・トリートメント・スタイリング剤など
- 店舗販売品:店販用のシャンプー・トリートメント・スタイリング剤など
- 貯蔵品:郵便切手、包装資材など
美容室でのルール作り
在庫管理は、まず初めに「入庫→保管(在庫)→出庫」の3つのタイミングで「品名」と「数量」の商品を記録する手順を決めましょう。
リッパーピッピでは、入出管理は1人のスタッフが交代制で担当しています。在庫担当者は、仕入在庫の発注と在庫管理表の入力が主な仕事です。
- 空になった材料等を所定の場所に集める
最後に使い切ったスタッフが、特定の場所へ置きます。 - 無くなった材料等は在庫管理表に商品名と数量を記載する
使用済保管箱を確認して、無くなった商品を在庫管理表に記載します。詳しくは後で説明します。 - 在庫管理表を確認して仕入材料を発注する
足りなくなりそうな商品をいくつかまとめて定期的に発注します。 - 商品が入庫されたら商品名と数量を確認して管理表に記載する
在庫管理表については後で詳しく説明します。 - 月末に在庫管理表の数量と仕入材料の在庫数を確認する
管理表と実際の在庫数は一致している必要があります。 - 月末に管理表を入力したら事務へメール送信する。
在庫管理表をメールに添付して送信します。
在庫管理担当者以外のスタッフのルールは、使い切った材料を所定の場所へ置くことだけです。
店舗販売品の出庫は売上管理で確認できるので、特別に報告する必要はありません。※売上管理の方法について詳しく知りたい人は、「美容室の売上を管理する方法(作成中)」を参考にしましょう。
在庫を管理する無料ソフト
画像引用:bizocean(ビズオーシャン)
当店ではビズオーシャンの無料テンプレートをスタッフに使ってもらっています。様々なテンプレートがあるので迷ってしまいますが、色々と試してみた結果、私は「在庫管理表001」がベストでした。
最初に商品コード登録を入力します。
枠に従って①商品コード②商品名③導入時在庫数を入力していきます。
商品数が多くて行数が足りないときには、複数に分けて「No.01」や「No.02」として2つの管理表を使用しています。
商品コード登録の下準備が完成すれば、あとは実際に入出庫の度に「在庫入出記録」へ担当スタッフが入力するだけです。
枠に従って各項目を入力します。商品コードを入れると、勝手に商品名が記載されるので、入庫または出庫の数を入れましょう。
月別在庫一覧表にも反映されるので、月末や月初めに実際に保管している個数と照らし合わせることができます。
ただし、使用済みの処分品を記録する前や、商品発送しているのにまだ手元に届いていないときなど、実際の数と誤差が生じるので注意が必要です。
使い途中の材料も気を付けましょう。カウント方法は、「半分以上残っているものは1とする」「0.5とする」や、「使用したものは0とする」など、どのようにカウントしてもいいのですが、全て統一したルールにする必要があります。
在庫管理ができたら棚卸資産を算出します。※棚卸資産の算出方法について詳しく知りたい人はこちらの「棚卸資産の算出方法(作成中)」を参考にしましょう。
在庫管理の注意点
在庫管理は次のことに注意しましょう。
- 実際の在庫を数える
- データと実際の誤差をチェックする
- 定点発注、定時発注、定量発注のルールを決める
- 戦略を考える
美容室の経営についてお困りの経営者様や当店の経営方針に興味がある方は、私の得意な分野でサポートやアドバイスを提供いたします。詳しく知りたい方はこちらの「美容室経営にお困りのオーナー様!」をご覧ください。
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