美容室の従業員へ、毎月のお給料以外にボーナスを支払ったときには、注意しなければいけない点があります。その従業員が健康保険に加入している被保険者の場合は、「被保険者賞与支払届」を提出する必要があるからです。
それでは、被保険者賞与支払届についてわかりやすく説明していきます。
被保険者賞与支払届とは
スタッフが健康保険や厚生年金保険などに加入している場合、報酬金額に応じた保険料を納めています。ちなみに標準報酬月額は、加入している本人と事業主で負担して支払っていますよね。
毎月の標準報酬月額のように、基本手当以外に支払った賞与にも、毎月の保険料と同率の保険料を負担する必要があります。この保険料額を決定するのに必要な手続きが「被保険者賞与支払届」です。
被保険者賞与支払届は、保険料や将来受け取る年金額の基礎となる標準賞与額に影響する手続きです。
被保険者賞与支払届の手続きが必要なケース
被保険者賞与支払届が必要な賞与は、次の3つ全てに該当するケースと例外に該当するケースです。
- 健康保険・厚生年金の被保険者または70歳以上の被用者
- 労働の対価として支給された賞与
- 賞与の支給回数が年3回以下
例外
資格取得月と同月に資格喪失した場合や育児休業などで保険料免除期間や資格喪失月に支払われたもの
健康保険・厚生年金の被保険者及び70歳以上被用者
被保険者賞与支払届は、賞与を支給されたスタッフが「健康保険・厚生年金保険の被保険者」または「厚生年金保険の70歳以上の被用者」の場合に必要となります。
労働の対価として支給された賞与
支給したボーナスが、賃金、給料、手当、賞与など、どのような名称であるかは関係ありません。事業主が労働の対償として支払ったものは、被保険者賞与支払届の手続きが必要になります。
ただし、「結婚祝金」「傷病見舞金」「弔慰金」などは労働の対償とは言えないので、対象外になることを覚えておきましょう。
賞与の支給回数が年3回以下
賞与は、給料とは違い支給しなくてもいいものなので、必要ないと考えている事業主の方もいるのではないでしょうか。反対に、事業主の方針で自由に決めることができますし、スタッフのモチベーションも上がるため、ユニークな思想でボーナスを支給する方もいます。
しかし、1年に何度も支給するケースでは被保険者賞与支払届が必要ないケースがあります。ボーナスを年4回以上実施することが決まっている場合は、被保険者賞与支払届の提出は必要ありません。
年3回以下の賞与は被保険者賞与支払届が必要ですが、年4回以上の賞与は給与として取り扱われます。給与とみなされると、支給名目が「賞与」や「ボーナス」だったとしても、標準報酬月額として計算されることになります。
被保険者賞与支払届の手続き
届出用紙の入手方法
賞与支払届の届出用紙は、日本年金機構に登録している賞与支払予定月の前月に、必要事項を印字されたものが送付されます。
事前に登録していない賞与を支給する場合は、日本年金機構ホームページ「賞与を支給したとき」から用紙をダウンロードするか、後述する管轄の事務センターに連絡して届出用紙を取り寄せましょう。
今後も決まった月に届出用紙を必要とする場合は、「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届(処理票)」を提出しておくと、予定月の前月に送られてくるので便利かもしれませんね。
用紙の提出先
賞与支払届の届出用紙の提出方法は、郵送、窓口持参、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)の4つがあります。
郵送や窓口へ持参する場合は、日本年金機構ホームページ「全国の相談・手続き窓口」で管轄する年金事務所を確認しましょう。
用紙の提出期限
賞与支払届は、賞与支給い後の翌日から5日以内に提出する必要があります。
賞与支給日から5日以上過ぎてしまった場合は、気付いた時点ですぐに管轄の年金事務所へ相談しましょう。
被保険者賞与支払届の書き方
被保険者賞与支払届は、総括表と70歳以上被用者賞与支払届を兼ねた2種類があり、両方に記入する必要があります。
被保険者賞与支払届-総括表-用紙の書き方
被保険者賞与支払届の総括表とは、その名称の通り賞与を支給した個々のものをひとつにまとめた表のことです。
賞与予定月に賞与を支払わなかった場合、後述する「被保険者賞与支払届」は提出しなくてもいいのですが、この「被保険者賞与支払届(総括表)」は必ず提出する必要があります。総括表に支給しなかったと記入することで、年金機構は未提出ではないと確認できるからです。
支給予定月に変更があったときも、この用紙で連絡することができます。
それでは用紙に書かれている順に書き方を見ていきましょう。
提出者記入欄
提出者欄を記入するために、日本年金機構で加入手続きしたときに発行された「適用通知書」や「決定通知書」を手元に用意しましょう。
①提出する年月日を記入します。
②適用通知書を見ながら「事業所整理記号」を記入します。
飯能市にある髪質改善美容室リッパーピッピの場合、事業所整理記号欄には「飯」の漢字に続いてひらがなが書いてあります。
これらは、全日本健康保険協会埼玉支部「健康保険被保険者証の記号変換 」を参考に数字化する必要があります。
心配な場合は、管轄の年金事務所に相談しましょう。ちなみに私が問い合わせたときは、年金事務所の方が市区町村番号をすぐに調べてくれて「飯能市は06です。続きは書いてあるひらがなをそのまま記入してください。」と助言してくれました。
本来なら「□□06□0101」としなければいけないところでしょうが、「□□06□いい□□」といった感じで記入しました。※リッパーピッピの事業所整理記号は「飯 いい」ではありませんが、例として記載させて頂きました。
③適用通知書を見ながら「事業者番号」を記入します。
事業者番号は数字化されているので、そのまま5つの数字を記入します。
④適用通知書を見ながら事業所について記入します。
- 事業所所在地
- 事業所名称
- 事業主氏名
- 電話番号
- 押印または自署
これで提出者記入欄は終わりです。次は、賞与支払情報と賞与支払情報内訳を記入します。
①賞与を支給する年月を記入します。支給しない場合でも、支払予定年月を記入します。
②賞与支給の有無について記入します。
賞与を支給する場合は、「0.支給」に丸を付けます。
ここで、先述しましたが賞与を支払わなかった場合でも提出する意味がある「1.不支給」が登場します。賞与を支給する予定が支給しなくなったときは、「1.不支給」に丸を付けます。支給しなかった場合は、これで終了です。以下の③~⑥の欄には記入せずに提出します。
③賞与を支給した日に、加入している被保険者数を記入します。
④実際に賞与を支給した人数を記入します。
⑤賞与を支給した総額を記入します。
⑥賞与の名称を「夏季賞与」や「期末手当」などと種類別に記入します。
今後、予定していた賞与支払日を変更する場合は、上記⑦に変更する月を記入します。
被保険者賞与支払届(70歳以上被用者賞与支払届)用紙の書き方
被保険者賞与支払届(70歳以上被用者賞与支払届)用紙は、賞与を支給したスタッフ個人個人の情報を記入します。
賞与を支給しない場合は、この被保険者賞与支払届(70歳以上被用者賞与支払届)に記入する必要はありません。
ピンク枠で囲んだ提出者欄の書き方は、先述した「総括表」と同じです。
①被保険者整理番号を記入します。被保険者整理番号とは、同じ会社や美容室内でスタッフごとに分類されている識別番号のことです。
ちなみに、被保険者証の枠で囲まれた部分に明記されています。
②賞与を支給した該当スタッフ(被保険者)の氏名を記入します。
③該当スタッフの生年月日を次の記号に習って記入します。
- 元号 (1.明治 3.大正 5.昭和 7.平成 9.令和)
- 年月日 1桁の場合は前に0を付けます
例えば、生年月日が昭和60年10月5日は「5ー601005」となり、平成8年2月14日は「7-080214」のように記入します。
④賞与支払年月日(共通)は、1桁の場合は前に0を付けて2桁で記入します。
⑤賞与を通貨で支払ったときは「ア通貨」へ、1,000円未満を切り捨てた金額を記入します。
⑥賞与として、食事や自社製品、寮の貸与など現物支給したときには「イ現物」に、1,000円未満を切り捨てた金額を記入します。現物支給の金額は、日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」を参考にしましょう。
⑧備考欄は、次に該当する場合は○で囲みます。
- 70歳以上被用者
70歳以上の場合は⑦個人番号(基礎年金番号)にも記入する必要があります。 - 二以上勤務
2か所以上のところへ勤務している場合に記入する。 - 同一月内の賞与合算
同じ月に2回以上賞与を給付した場合は合算して、(かっこ)内に初回の日にちを記入する。
④賞与支払年月日(共通)には最後に支給した日を記入する。
すでに手続きが済んでいるときは合算する必要はありません。
複数人へ賞与を支給した場合は、「2」「3」の欄へ同様に記入します。以上で被保険者賞与支払届の記入は終了です。
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